ノイズ除去・音声修復ソフトは、録音に入ってしまったノイズ(エアコンの音、ハム音、リップノイズ、部屋の響きなど)をあとから減らすためのソフトです。自宅録音の歌ってみたでは、録り直しをせずに済む場面が多くあります。
ここでは、定番のiZotope RX 12の3つのエディションに加えて、SpectraLayers・Acon Digital・Antinodeの製品を、歌の録音を整えるという目的で比べています。
この一覧は、ノイズ除去・音声修復ソフト13製品を歌の録音のノイズ対策・音の分離・手早さ・配信・リアルタイムの4項目で比べたものです。点は「目的に対してどれだけ優れているか」を項目ごとの条件に当てはめて決めていて、根拠はメーカー公式の情報です。価格は点数に含めていません。
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目的別のおすすめ
- 歌ってみたの録音を一通り整えるなら:RX 12 Standard(ランクS)— リップノイズ・息・歯擦音まで対処でき、ボーカルとオケの分離もできます。
- 部屋鳴りや生活音を手早く減らすなら:Clear(ランクB)— つまみ3つで、ノイズと部屋の響きを減らせます。
- ボーカルと伴奏を分けたいなら:SpectraLayers Pro 13(ランクA)— 曲のパートを細かく分離でき、画面で見ながらの修復もできます。
- 基本のノイズだけ手ごろに直すなら:RX 12 Elements(ランクB)— 背景ノイズ・ハム・クリック・部屋の響きに対処できます。
ランクのティアリスト
ランクは、メーカー公式の機能・仕様をもとにした評価で、音質の優劣ではありません。同じ段の中は、点数の高い順です。根拠は評価の付け方にあります。
評価項目ごとのティア表
総合のランクが同じでも、項目ごとに強みは違います。表の見出しを押すと、その項目のランクが高い順に並べ替えられるので、ほしい機能で選ぶときに使ってください。
| 製品 | 総合 | 歌の録音のノイズ対策自宅録音でよく入るノイズへの対応 | 音の分離声とオケ、パートごとに分ける機能 | 手早さ修復を速く進める仕組み | 配信・リアルタイム配信や録音中に、声のノイズをリアルタイムで減らせるか |
|---|---|---|---|---|---|
iZotopeRX 12 Advanced | S4.8 | Sリップ・息まで | S場面の分離まで | S空気感・EQも合わせる | AVoice De-noise(遅れなし) |
iZotopeRX 12 Standard | S4.4 | Sリップ・息まで | A声の抽出・分離 | A提案+スペクトル編集 | AVoice De-noise(遅れなし) |
SteinbergSpectraLayers Pro 13 | A4.0 | A響き・歯擦音も | S曲の全パート分離 | S自動処理+一括 | C録音後の編集が中心 |
Antinode AudioClear | B3.0 | Cノイズ+響き | B声の分離 | Bつまみ3つ | S配信向けと明記 |
iZotopeRX 12 Elements | B2.8 | B基本のノイズ | Cなし | B自動提案 | AVoice De-noise(遅れなし) |
WavesClarity Vx | B2.6 | C背景ノイズ | B声の分離 | Bつまみ1つ | Bリアルタイム |
WavesNS1 | B2.6 | C背景ノイズ | B声の分離 | Bフェーダー1本 | Bリアルタイム |
WavesClarity Vx Pro | B2.6 | C背景ノイズ+反射 | B声の分離 | Bつまみ1つ+詳細 | Bリアルタイム |
SteinbergSpectraLayers Elements 13 | C2.4 | Cノイズ・ハム・クリック | Bボーカルの分離 | Bスペクトル編集 | C録音後の編集が中心 |
Acon DigitalRestoration Suite 2 | C2.2 | Cノイズ・ハム・クリック | Cなし | B自動モード | Bプラグイン(DeNoise など) |
WavesWNS | C2.2 | C背景ノイズ+響き | Cなし | B設定を提案 | Bリアルタイム |
WavesZ-Noise | C2.2 | Cノイズ・ハム | Cなし | B自動追従モード | Bプラグイン |
Bertom AudioDenoiser Classic | C2.2 | Cノイズ | Cなし | C手動の調整 | Aゼロレイテンシー |
列の見出しを押すと、その項目で並べ替えられます(もう一度押すと逆順)。各マスは、その項目の点(1〜5点)を、5点=S・4点=A・3点=B・2点以下=Cで表したものです。「—」は点のない項目です。メーカー公式の機能・仕様での評価で、音質の優劣ではありません。点の付け方は評価の付け方にあります。
点数順の主な製品
iZotope RX 12ランクS
SpectraLayers 13ランクA
ClearランクB
Clarity VxランクB
NS1ランクB
Clarity Vx ProランクB
Restoration Suite 2ランクC
WNSランクC
Z-NoiseランクC
この比較で点数が高い順に、最大9製品(シリーズは1つにまとめています)を並べています。画像はメーカー公式のプレス用画像で、ない製品は製品名のカードを表示しています。全体の順位とランクの根拠は、下のティア表と各製品のページにあります。
無料ではじめるノイズ除去・音声修復ソフト
お金をかけずに試したい方や、はじめての1本を探している方は、無料で使える製品から始められます。無料の範囲や条件は、各製品のページで確認してください。
- Denoiser Classic(ランクC・無料):無料で、ノイズ除去をまず試したい人。ライブや配信でも、遅れの少ないノイズ除去を使いたい人。
ノイズ除去・音声修復ソフトの選び方

図:SoundBounty
どんなノイズを消したいか
エアコンやパソコンの「サー」という音、電源の「ブーン」というハム音、部屋の響き、口の中のリップノイズなど、ノイズの種類によって得意な製品が違います。自分の録音で困っているノイズを消す機能があるかを最初に確認してください。
自動で手早く済ませるか、細かく直すか
AIが声と雑音を分けてつまみ数個で済ませるタイプと、音を周波数の絵で見ながら1か所ずつ消せるタイプがあります。手早さを取るなら前者、クリックや咳など特定の音を狙って消したいなら後者が向いています。
プラグインで使うか、単体ソフトで使うか
DAWの中でプラグインとして使えるものと、単体のソフトで編集するものがあります。歌ってみたの録音を1本ずつ仕上げるなら、どちらでも作業できます。DAWとの行き来が多い人はARA対応かどうかも見ておくと便利です。
使い方は「歌ってみたMIXのプラグインの順番」で解説しています。
製品ごとのひとこと
iZotope RX 12(RX 12 Elements B・RX 12 Standard S・RX 12 Advanced S)
iZotopeの「RX 12」は、録音に入ったノイズや部屋の響き、クリックなどを取り除く音声修復ソフトです。Elements・Standard・Advancedの3つのエディションがあり、使える修復の種類が違います。

画像:iZotope公式プレスキットより
SpectraLayers 13(SpectraLayers Elements 13 C・SpectraLayers Pro 13 A)
Steinbergの「SpectraLayers 13」は、音を周波数の絵(スペクトル)で見ながら、ノイズや不要な音を消したり、音を分離したりできる編集ソフトです。ElementsとProの2つのエディションがあります。

Clear(ランクB)
声・周りの音・声の響きの3つのつまみで、ノイズと部屋の響きを減らせるプラグインです(旧Supertone Clear)。AIの声の分離で、声だけを残したり、逆に声を消したりできます。自宅で録った歌の部屋鳴りや生活音を、つまみ3つで手早く減らしたい人に向いています。
Clarity Vx(ランクB)
AI(ニューラルネットワーク)で声と背景ノイズを見分け、つまみ1つでノイズを減らすWavesのプラグインです。音楽の歌にも、動画・ポッドキャストの声にも使えます。エアコンや車の音、周りの話し声などを、手早く減らしたい人に向いています。

NS1(ランクB)
声とノイズを自動で見分けて、フェーダー1本でノイズを減らすWavesのリアルタイム・プラグインです。動画の声や歌にも、音楽のトラックにも使えるとメーカーは説明しています。とにかく簡単に、声の背景ノイズを減らしたい人に向いています。
Clarity Vx Pro(ランクB)
AI(ニューラルネットワーク)で声と背景ノイズを分けて、声のノイズを減らすWavesのプラグインです。Clarity Vxに、6バンドの調整、4つのネットワークの切り替え、部屋の反射の調整、声の合間を静かにするアンビエンスゲートを足した上位版です。Clarity Vxより細かく、ノイズや部屋の反射の減らし方を調整したい人に向いています。
Restoration Suite 2(ランクC)
DeNoise(ヒスや風などのノイズ)・DeHum(ハム)・DeClick(クリック)・DeClip(音割れ)の4つのプラグインのセットです。時間とともに変わるノイズに合わせるダイナミック・ノイズプロファイルが特徴です。ギターのアンプノイズやハム、音割れなど、録音時のノイズを手ごろな価格で直したい人に向いています。

画像:Acon Digital公式プレスキットより
WNS(ランクC)
6バンドのダイナミックEQで、声の背景ノイズや部屋の反射、ルームトーンを自然に下げるWavesのプラグインです。メーカーは、「Suggest」ボタンが出だしの設定を提案すると説明しています。部屋の響きや背景ノイズが気になる声を、不自然にならない程度に整えたい人に向いています。
Z-Noise(ランクC)
音楽向けのノイズ除去プラグインです。ノイズのプロファイル(特徴)を取り込んで、マイクプリのヒスやハム、パソコンの音などを減らします。変化するノイズに追従するAdaptiveモードもあります。ギターやマイクのヒスなど、楽器や録音のノイズを、音の勢いを残したまま減らしたい人に向いています。
Denoiser Classic(ランクC)
遅れのないノイズ除去のプラグインです。FFT(周波数に分けて処理する方式)を使わない従来型の操作で、CPU負荷は低く、声に限らず音楽にも使えるとメーカーは説明しています。支払う金額を自分で決める方式で、0円でも入手できます。無料で、ノイズ除去をまず試したい人。ライブや配信でも、遅れの少ないノイズ除去を使いたい人に向いています。
よくある質問
Q. ノイズ除去で声が悪くなることはありますか?
強くかけすぎると、声がこもったり、金属的な響きが残ったりします。まずは弱めにかけて、元の声と聞き比べながら少しずつ強めるのが基本です。
Q. 録音の時点でできる対策は?
エアコンや換気扇を止める、マイクを口に近づける、部屋の響きを吸音材や布で減らすなど、録音前の対策でノイズはかなり減らせます。ソフトは最後の仕上げと考えると、音質を保ちやすくなります。
Q. エディションはどれを選べばいい?
よく使うノイズ除去(サー音・ハム・響き)が入っているかで選んでください。上位エディションには、映像や放送向けの機能など、歌ってみたではあまり使わないものも含まれます。
点数の付け方
点数の付け方(ノイズ除去・音声修復ソフト)
| 項目 | 使う数値 | 5点 | 4点 | 3点 | 2点 | 1点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 歌の録音のノイズ対策 | 自宅録音でよく入るノイズへの対応 | 背景ノイズ・ハム・クリック・響きに加え、リップノイズ・息・歯擦音・吹かれまで対処できる | そのうち大部分に対処できる | 背景ノイズ・ハム・クリック・部屋の響きなど基本に対処できる | 一部のみ | — |
| 音の分離 | 声とオケ、パートごとに分ける機能 | 声の抽出・パート分離・かぶり除去・場面の分離がそろう | そのうち3つ | そのうち1〜2つ | — | 分離の機能がない |
| 手早さ | 修復を速く進める仕組み | 自動提案・スペクトル編集・まとめて処理に加え、空気感やEQを合わせる機能がある | 自動提案・スペクトル編集・まとめて処理 | 自動で修復の設定を提案する機能がある | 自動の提案はなく、つまみなどを手で調整する | — |
| 配信・リアルタイム | 配信や録音中に、声のノイズをリアルタイムで減らせるか | リアルタイムで使え、配信での利用が公式に書かれている | 声のノイズ除去を、遅れのない(ゼロレイテンシー)リアルタイムのプラグインで使える | プラグインとして使える(遅れの大きさの記載なし) | 録音後の編集が中心(処理の試聴だけリアルタイム) | リアルタイムでは使えない |
自宅で録った歌のノイズを減らすという目的に対して、どれだけ優れているかを項目ごとに1〜5点で決めています。点は上の表の条件に当てはめて付け、ランクを出す平均では「歌の録音のノイズ対策」を2倍の重さで数えています。根拠はメーカー公式の情報です。音質やCPU負荷は実際に測っていないため点数には含めず、専門誌のレビューを記事の中で参考として紹介しています。価格は点数に含めません。 「配信・リアルタイム」は、検索で多い「配信で使えるノイズ除去」に答えるための項目です。メーカーや販売店の説明で確認できない機能は、ないものとして点数を付けています。 表の「OBS(配信)」は、配信ソフトOBS Studioで使えるVST2形式が公式ページに書かれているか(○)です。OBSはVST3形式に対応していません。点数には含めていません。
点数とランクの考え方は「評価の付け方」にまとめています。製品は順に追加していきます。
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