マイクの仕様表を見ると、「単一指向性」「無指向性」といった言葉が並んでいます。これは、マイクがどの方向の音を拾いやすいかを表す「指向性」のことです。宅録や歌ってみたでは、ほとんどのマイクが単一指向性ですが、なぜそうなのか、ほかの種類は何に向くのかが分かると、マイク選びも置き方も迷いにくくなります。この記事では、マイクメーカーのShureの公式資料をもとに、指向性の違いと、近接効果との関係を整理します。
※本記事はアフィリエイトプログラムを利用しています。
結論:宅録・歌ってみたは「単一指向性」を基本に考える
- 指向性とは、マイクが「どの方向の音を拾いやすいか」を表したものです。Shureは、正面から来る音と、ほかの方向から来る音のどちらを大きく拾うかを、角度ごとに図にしたものを「ポーラパターン」と呼んでいます。
- Shureは、よく使われる指向性を、無指向性・単一指向性・双指向性の3つに分けて説明しています。
- 歌ってみたのボーカル録音では、正面の声を中心に拾い、後ろの音を拾いにくい単一指向性(Shureが一般的と説明しているのはカーディオイド)が向いていそうです。
- 近接効果(マイクに近づくほど低音が強まること)は、Shureの説明では単一指向性のマイクで起きます。無指向性では起きにくい、とされています。
指向性(ポーラパターン)とは
Shureは、指向性を「マイクに届く音の方向や角度によって、感度がどう変わるか」と説明しています。マイクのまわりを360度ぐるりと回って、どの角度でどれだけ感度が変わるかを描いた図が、ポーラパターン(日本語では「指向特性図」とも呼ばれます)です。
図の見方はシンプルです。マイクの正面を0度とします。0度の位置で線が外側に大きく広がっていれば、正面の音をよく拾います。180度(真後ろ)で線が内側にへこんでいれば、後ろの音は拾いにくい、という意味になります。
ここで大事なのは、指向性は「ノイズを消す機能」ではなく、「どちら向きの音を相対的に小さく拾うか」という性質だということです。後ろ側の感度が低くても、正面から入ってくる音は、ノイズも含めて拾います。
3つの基本パターンと、それぞれの音の拾い方
無指向性(オムニ):全方向を同じように拾う
Shureは、無指向性マイクを「どの角度からも同じように反応し、拾える範囲は全周の360度」と説明しています。ポーラパターンを描くと、ほぼ円になります。
- 長所:Shureは、無指向性は自然で開けた音になり、アコースティックギターのような生楽器の音を録るのに向いていると説明しています。
- 短所:部屋の響き(アンビエンス)も多く拾います。Shureは、部屋の響きがよい場合は魅力にもなる、という書き方をしています。ライブ会場では、スピーカーの音を拾いやすく、ハウリング(キーンという音)が起きやすいとも説明しています。
- 調整のしかた:直接音と部屋の響きのバランスは、マイクと楽器の距離を変えて決められる、とShureは説明しています。
家で録音する場合、部屋の反響やエアコンの音がそのまま入りやすいと考えられるので、無指向性は、静かで響きの整った環境があるときに選ぶ候補になるかもしれません。
単一指向性:正面を中心に拾う
単一指向性は、特定の一方向の音をいちばん大きく拾うタイプです。Shureは、いちばん一般的なのが、ハート形に見える「カーディオイド」だと説明しています。正面(0度)の感度がいちばん高く、真後ろ(180度)がいちばん低くなります。
- Shureは、カーディオイドが拾う周囲の音(アンビエント)は、無指向性のおよそ3分の1だと説明しています。
- 実用的に拾える角度(有効な範囲)は131度とされ、1人か2人の歌い手に対応でき、歌い手が少し動いても拾いやすい、という書き方がされています。
- ライブでは、無指向性よりハウリングに強い、とも説明しています。
つまり、声に向けて置くことで、部屋の響きやうしろの音をおさえつつ、声を中心に録りやすい、ということです。宅録のボーカル用マイクの多くがカーディオイドなのは、この性質が使いやすいからと考えられます。
単一指向性の仲間:スーパーカーディオイドとハイパーカーディオイド
Shureは、カーディオイドよりも、さらに前を狭く拾うタイプとして、スーパーカーディオイドとハイパーカーディオイドを紹介しています。拾える角度は、スーパーカーディオイドが115度、ハイパーカーディオイドが105度です。周囲の音をさらに拾いにくい反面、真後ろの感度は完全には下がらず、いちばん拾いにくい向きが後ろ寄りの斜めにずれる、とされています。
そのためShureは、ステージのモニタースピーカーを置く位置に気をつけるよう案内しています。ただし、これは主にライブの話です。自宅で1人で録るだけなら、まずカーディオイドで困ることは少ないかもしれません。
双指向性(8の字):前と後ろを拾い、横は拾わない
双指向性は、正面(0度)と真後ろ(180度)の両方で感度が高く、真横がいちばん低いパターンです。形が数字の「8」に似ているため、「8の字」とも呼ばれます。
- Shureは、向かい合う2人の歌い手など、2つの音源を同時に録るときに使える、と説明しています。
- 拾える角度は狭く、マイクの真後ろに別の音源がなければ、1つの声を孤立させて録るのにも使えます。
- ただし、Shureは「多くの場合は片面だけを使う」と書いています。
1人で歌う宅録では、双指向性を使う場面はあまり多くないかもしれません。デュエットを1本のマイクで録りたいときなどが候補です。
近接効果と指向性の関係
近接効果とは、マイクを口に近づけるほど、低音が強く録れる現象です。Shureは、単一指向性のマイクで、音源との距離が近くなるほど低音が増える、と説明しています。1フィート(約30センチ)より近づけるときは、近接効果に気をつけ、必要に応じて低音をカットするとよい、という案内もあります。
- 単一指向性(カーディオイドなど):近づくと低音が増えます。声に温かさが出る反面、近づきすぎるとこもったように聞こえることがあります。距離の考え方は「歌ってみたのマイクの距離とポップガードの使い方」で説明しています。
- 無指向性:Shureは、無指向性のマイクを使えば、近接効果を避けられ、ポップノイズ(「パ行」の吹かれ)も減らせるという例を挙げています。
- サブカーディオイド:無指向性とカーディオイドの中間にあたるパターンで、近接効果がとても少ない、とShureは説明しています。
ここで言えるのは、近接効果が出やすいかどうかは、指向性のタイプで変わる、ということです。マイクの距離を変えたときの音の変化が大きいか小さいかも、指向性が関係していると考えられます。
宅録・歌ってみたでの選び方
ここからは、公式の説明をふまえた、使いどころの考え方です。実際の聞こえ方は、マイクの機種や部屋によって変わります。
- ボーカルを1人で録る:単一指向性(カーディオイド)が基本です。声を中心に拾い、背後の部屋の音を減らせます。
- 部屋の反響が気になる:カーディオイドを選び、口を正面に向けて歌います。無指向性は部屋の音も多く拾うため、響きが整っていないと入りやすいかもしれません。
- 生楽器を自然に録りたい:Shureが無指向性を生楽器向きとしているように、静かな部屋なら候補になります。
- 2人以上で1本のマイクを使う:双指向性なら向かい合う2人、無指向性なら周りを囲んだ複数人、という使い方がShureの資料に出てきます。
- パターン切り替えのあるマイク:Shureは、指向性を切り替えられるマルチパターンのマイクを「1本で2本分」と表現しています。1本でいろいろ試したい場合は、切り替え式を選ぶ考え方もあります。
コンデンサーマイクとダイナミックマイクの違いは「ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの違い」で、マイクを比べたい場合は「マイクの比較一覧」で確認できます。
マイクの向きと置き方の注意点
- 向きを間違えない:単一指向性のマイクには、音を拾う面(正面)があります。どの面が正面かはマイクごとに違うので、取扱説明書で確認してください。
- 真後ろに音源を置かない:スーパーカーディオイドやハイパーカーディオイド、双指向性では、真後ろにも感度が残ります。
- 斜めに向けると音が変わる:Shureは「オフアクシス(正面から外れた方向)では周波数特性が一定でなく、とくに高音が変化して不自然に聞こえることがある」と説明しています。声は正面から録るのが基本です。
- 距離で音を調整する:距離によって、直接音と部屋の響きのバランスが変わります。
よくある質問
Q. 単一指向性なら、後ろの音は完全に聞こえなくなりますか?
完全には消えません。単一指向性は、後ろの音を「拾いにくい」だけで、まったく拾わないわけではありません。Shureも、カーディオイドが拾う周囲の音は無指向性の約3分の1と説明しており、ゼロとは書いていません。
Q. 歌ってみたに無指向性マイクは使えませんか?
使えないわけではありません。ただ、部屋の響きも多く拾うため、響きが整っている場所のほうが向いています。まずは単一指向性を基本に考えるのが無難です。
Q. 近接効果は、悪いものですか?
悪いものとは限りません。声が温かく聞こえることもあります。Shureは、近づけて使うときは低音を整えるとよい、と案内しています。マイクを近づけたいかどうかで、付き合い方を決めます。
Q. USBマイクの指向性は、どこで分かりますか?
製品の仕様表や取扱説明書に書かれています。「Cardioid」「Omnidirectional」「Bidirectional」といった英語表記のこともあります。選ぶ前に確認しておくと安心です。
まとめ
指向性は、マイクが「どの方向の音を拾うか」を表したものです。無指向性は全方向、単一指向性は正面中心、双指向性は前と後ろを拾います。宅録・歌ってみたでは、正面の声を中心に拾える単一指向性を基本にしつつ、近接効果が出る点を覚えておくと、距離の調整がしやすくなります。マイクを選ぶときは、仕様表の指向性の欄もあわせて見てみてください。


コメント