コンプ(コンプレッサー)は、大きい音を抑えて、声の大きさのばらつきを小さくする道具です。歌ってみたでは、歌詞が聞き取りやすく、オケの中で声が安定して聞こえるようにするために使います。ただ、つまみが多くて、最初はとっつきにくい道具でもあります。この記事では、ボーカルのコンプの基本を、つまみの意味から順番に解説します。
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この記事の要点
- コンプは、大きい声を抑えて、声の大きさのばらつきを小さくする道具です。
- スレッショルドで「どこから抑えるか」、レシオで「どれくらい強く抑えるか」を決めます。
- アタックとリリースは、数字ではなく、耳で決めます。
- かけすぎると、声が平たくなり、息づかいやノイズが目立ちます。
- ボーカル用の決まった数値は、メーカーの資料にもありません。

図:SoundBounty
コンプが何をしているか
コンプは、入ってくる音の大きさを見張っていて、決めた大きさを超えたときだけ、音量(ゲイン)を下げます。多くのコンプは、同じ基本のつまみを持っています。FabFilterは、基本を覚えれば、ほとんどのコンプを扱えると説明しています。
ボーカルでは、サビで声が大きくなったところを少し抑えて、小さな声のところとの差を縮めるのが主な役目です。差が小さくなると、全体の音量を上げたときに、小さい声が埋もれにくくなります。
つまみの意味
| つまみ | 意味 | ボーカルでの考え方 |
|---|---|---|
| スレッショルド | どの大きさから抑え始めるか | 大きい声のところでだけ反応するように、少しずつ下げていく |
| レシオ | どれくらい強く抑えるか | 低めから試して、足りなければ上げる |
| アタック | 反応し始めるまでの速さ | 速すぎると言葉の頭がつぶれ、遅すぎると大きい声が通り抜ける |
| リリース | 抑えるのをやめるまでの速さ | 次の言葉の頭に、抑えが残らないようにする |
| メイクアップゲイン | 抑えた分の音量を戻す | オン・オフで音量がそろうように合わせる |
スレッショルドとレシオの関係
スレッショルドは、抑え始める大きさ(これを超えた分だけが抑えられます)。レシオは、超えた分をどれだけ抑えるかの比率です。FabFilterの例では、レシオが4:1のとき、スレッショルドより入力が4dB大きくなっても、出力は1dBしか大きくなりません。入力が-30dB、スレッショルドが-38dBなら、入力は8dB超えています。出力は2dBだけ超えた-36dBになり、6dB抑えたことになります。
この「抑えた量」は、コンプのゲインリダクション(GR)のメーターで見られます。ボーカルでは、メーターが大きく振り切れるより、声の大きい部分で少し動くくらいから始めると、不自然になりにくいです。
アタックとリリースは、耳で決める
アタックは「コンプが反応するまでの速さ」、リリースは「抑えを戻すまでの速さ」です。FabFilterは、設定の順番として、先にアタック、次にリリースを決めるやり方を紹介しています。アタックを速くしすぎると、音の頭(トランジェント)が抑えられて、勢いがなくなります。リリースが長すぎると、次の音の頭が来たときにも、まだ抑えている状態になります。
ミリ秒の数字は、参考にはなりますが、コンプの種類(アルゴリズム)によって効き方が違います。FabFilterも、数字にこだわらず、音の不自然さが少ないところを耳で探すよう勧めています。そのため、この記事では、ボーカルの「正しい数値」は書いていません。
基本の手順
- レシオを低めにします。
- スレッショルドを下げていき、声の大きいところで、ゲインリダクションのメーターが少し動くところに合わせます。
- アタックを動かして、言葉の頭がつぶれないところを探します。次にリリースを動かして、音量の揺れが不自然にならないところを探します。
- メイクアップゲインで音量を戻し、オン・オフを同じ音量で聞き比べます。音量が大きいほうが良く聞こえてしまうので、必ず音量をそろえて比べてください。
- 最後は、オケと一緒に聞いて、声が埋もれていないか、平たくなっていないかを確かめます。
かけすぎのサイン
- 息づかいやリップノイズが、目立つようになった
- 声が平たく、元気がなく聞こえる
- 歌っていない部分で、部屋の音やノイズが持ち上がる
- 言葉の頭がつぶれて、勢いがなくなった
こうなったら、スレッショルドを上げるか、レシオを下げて、抑える量を減らしてください。アタックが速すぎると、音の頭が抑えられて勢いがなくなります。
よく使われる応用
2段がけ
1台で強くかけるのではなく、軽くかけるコンプを2台つなげる方法です。1台目で大きな山を抑え、2台目で全体を軽くそろえると、自然に仕上げやすくなります。これは、よく使われる考え方で、メーカーが決めた方法ではありません。
パラレルコンプ
強くかけた音と、かけていない元の音を混ぜる方法です。FabFilterは、強く圧縮した音と、圧縮していない元の音を混ぜる方法として説明しています。元の音の頭を残したまま、小さい部分の細かい音を持ち上げられます。ミックス(Mix、Dry/Wet)つまみがあるコンプなら、1台で同じことができます。声の芯を保ちながら、存在感を出したいときに向いています。
コンプの前にEQを置く理由
FabFilterは、バスに低音が多く入っていると、コンプがそこに反応して、ほかの音を抑えてしまうことがあると説明しています。ボーカルでも同じで、不要な低音やこもりを、コンプの前にEQで削っておくと、コンプが声そのものに反応しやすくなります。順番については「歌ってみたMIXのプラグインの順番」で解説しています。
よくある質問
Q. コンプはどのプラグインの後にかける?
不要な低音やこもりを削るEQのあとが、一般的な順番です。理由は「歌ってみたMIXのプラグインの順番」で解説しています。
Q. 設定が難しくてよく分からない
AIが声を聞いて設定を提案してくれるコンプもあります。まず提案を出発点にして、聞きながら少しずつ直すと覚えやすくなります。「コンプレッサープラグインのおすすめ比較」で紹介しています。
Q. リミッターとの違いは?
リミッターは、決めた上限を超えないように強く抑える道具で、主に曲の最後の仕上げに使います。くわしくは「リミッターのおすすめ比較」をご覧ください。
Q. 数字の目安はありませんか?
メーカーの資料では、ドラムやミックス全体など、素材ごとの例は示されていますが、歌ってみたのボーカル用の決まった数値は示されていません。コンプの種類によって効き方が違うので、数字を探すより、ゲインリダクションのメーターと耳で決めるほうが確実です。


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