ボーカルのサチュレーションの使い方|歌ってみたで声に厚みと温かみを足す基本

ボーカルのサチュレーションの使い方|歌ってみたで声に厚みと温かみを足す基本

歌を録って、EQやコンプで整えたのに、なんだか声が薄い、平らに聞こえる。そんなときに使われるのが、サチュレーションです。サチュレーションは、音を少し歪ませて、声に厚みや温かみを足すエフェクトです。この記事では、サチュレーションの基本と、かけすぎを防ぐ手順を、iZotope・FabFilter・Soundtoysの公式資料をもとにまとめます。

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目次

この記事の要点

  • サチュレーションは、もともと、アナログ機材(真空管、トランス、テープ)に大きな音を入れたときに起きる歪みです。
  • iZotopeの説明では、サチュレーションは、音を圧縮する働きと、倍音(元の音の整数倍の高い音)を足す働きを同時にします。
  • 「ドライブ」で歪みの量を、「ミックス」で元の音との混ぜ具合を決めます。
  • かけすぎると、ざらつき、低音のぼやけ、「サ行」の刺さりが出ます。
  • ディエッサーは、サチュレーションのあとに置いたほうが、強くなった「サ行」を抑えやすいかもしれません。

サチュレーションをかける5つの手順の図
図:SoundBounty

サチュレーションとは

iZotope Learnは、サチュレーションを、アナログ機材の部品に大きな音を入れたときに起きる、歪みの一種と説明しています。真空管、トランス、テープマシンなどに音を通すと、耳に心地よく聞こえるのは、次の2つが元の音に加わるからだそうです。

  • 圧縮:入力を大きくしても、出力が同じだけは大きくならなくなり、音の大小の差が小さくなります。
  • 倍音の追加:元の音(基音)の何倍かの高さの音が足されます。倍音には、基音の偶数倍の「偶数次」と、奇数倍の「奇数次」があります。

iZotope Learnは、奇数次の倍音は、音に厚み、温かみ、豊かさを足し、偶数次の倍音は、エッジや食いつきを足す、と説明しています。どの倍音を、どれだけ足すかは、製品やモードによって違います。

出典:iZotope Learn(What is audio saturation?)

代表的な「種類」

サチュレーションのエフェクトは、模した機材の種類(スタイル、モード)を選べるものが多くあります。公式の説明から、例をまとめます。

公式動画:FabFilter公式YouTubeチャンネル「Introduction to FabFilter Saturn 2」(英語の解説) YouTubeで見る

  • FabFilter Saturn 2:真空管、テープ、アンプ、トランスなどの種類があります。真空管は、「控えめできれいなもの」から「荒れた音」まで、テープは「控えめ」から「極端」まで、トランスは「控えめ」から「色の濃いもの」までと説明されています。
  • iZotope Nectar:Tape、Tube、Warm、Analog、Retroの5つのモードがあります。Warmは偶数次の倍音だけを出す、控えめな温かみ、Tubeは偶数次と奇数次の混合で、「はっきりした」音、Retroは奇数次中心で、鋭く、やや攻撃的な音、と説明されています。
  • Soundtoys Decapitator:A、E、N、T、Pの5つのスタイルがあり、それぞれ、別のアナログ機材を調べて作ったと説明されています。

出典:FabFilter Saturn 2 ヘルプ、iZotope Nectar 2 ヘルプ、Soundtoys Decapitator ユーザーガイド

基本の手順

  1. 種類を選ぶ:歌には、控えめなタイプから試すと、始めやすいかもしれません(FabFilterは、真空管やテープに、控えめなものがあると説明しています。iZotope Nectarでは、Warmが「控えめな温かみ」と説明されています)。
  2. ドライブを上げていく:Soundtoysは、ドライブを、アナログ回路への入力の大きさのようなもので、強く押すほど歪む、と説明しています。ドライブを上げると、出力の音量も上がるので、出力のつまみで合わせるか、自動で合わせる機能(Auto-Gain)を使います。FabFilter Saturnは、ドライブを上げても、全体の音量が暴れないよう、出力が自動で調整されると説明しています。
  3. ミックスで、元の音と混ぜる:ミックスは、元の音(ドライ)と、歪ませた音(ウェット)の混ぜ具合です。iZotope Learnには、ドラムの例ですが、強く歪ませた音を、少しだけ混ぜて、音に面白みを足す使い方が紹介されています。
  4. トーンと、低い音・高い音のカット:下の「かけすぎを防ぐコツ」を見てください。
  5. オン・オフを同じ音量で比べる:サチュレーションは、音量も上がりやすいので、同じ音量に合わせて、オケと一緒に聞き比べます。

公式動画:FabFilter公式YouTubeチャンネル「Beginner’s Guide to Saturation」(英語の解説) YouTubeで見る

かけすぎを防ぐコツ

  • 低い音を、歪ませる前に削る:Soundtoys Decapitatorの「Low Cut」は、歪ませる前に低い音を削り、低音が多い音に歪みをかけたときの「ぼやけ(flabbiness)」を防ぐと説明されています。
  • 高い音の「ざらつき」を削る:Decapitatorの「High Cut」は、歪ませたあとの高い音を削り、歪みで出る「ザラザラ(fizz)」を抑えると説明されています。
  • トーンは、歪ませる前の音に効く:Decapitatorの「Tone」は、歪ませる前に効くので、どの高さの音が歪むかを変えます。音の印象が大きく変わることがあるそうです。
  • 強すぎる設定は、一瞬だけ:Decapitatorの「Punish」は、20dB大きく入れる、強烈な設定で、「すべてが荒く、大きく、歪む」と説明されています。歌に、そのまま使うものではない、と考えたほうがよいかもしれません。
  • 「サ行」の刺さりに気をつける:iZotope Nectarのヘルプには、声にサチュレーションをかけると、足された倍音で、「サ行」が刺さるように聞こえることがある、と書かれています。Nectarでは、歪ませた音だけに効く、高域を下げるフィルターが用意されています。

「サ行」が強くなったときは、ディエッサーを使う方法があります。ディエッサーの使い方は「ボーカルのディエッサーの使い方」にまとめています。

出典:Soundtoys Decapitator ユーザーガイド、iZotope Nectar 2 ヘルプ

製品の選び方

サチュレーションのエフェクトは、種類、調整できる項目、音の色が、製品によって違います。製品ごとの特徴は「サチュレーションのおすすめ比較」で比べています。

よくある質問

Q. サチュレーションは、必ず必要ですか?

必要ありません。声が薄い、平らだと感じたときに、試す道具の1つです。

Q. EQやコンプとの違いは?

EQは、音の高さごとの大きさを変えます。コンプは、音の大小の差を小さくします。サチュレーションは、音の圧縮と、倍音の追加を同時にする、とiZotope Learnは説明しています。EQとコンプの使い方は、「ボーカルEQのかけ方」と「ボーカルのコンプの使い方」を見てください。

Q. 数字で決まった設定はありますか?

声やマイク、曲によって変わるので、決まった数値は示していません。ドライブを少しずつ上げて、聞きながら決めてください。

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